なんて言ったらいいのかわからずに、あたしは綺麗に洗われた食器たちに視線を落とした。



「どうしていいのか……わかんなかったの」


「……」



そう言って、ちぃちゃんはキュッと水を止めたままどこか遠い目をした。



「……真尋は、事故する前と全然かわらなくて。 うんん、むしろ、意識を失っていた時の時間を埋めようとしてくれてるのかもしれないけど、うんと優しいし、わたしの事もすっごく大事にしてくれてるって……、わかるの」


「ん」



うなずいて、胸の奥がチクンと軋んだ。

目の前がクラクラしそうで、あたしはステンレスの流し台に両手をついて、なんとか立っていた。

大好きなちぃちゃんの、透き通るような声。

左の耳から、スウッとあたしの体に浸透する、まるで砂糖のようなその声に、あたしの脳みそは溶かされてしまったようだ。


理解、したくても。
したくないって、そう拒んでる。




…………ズキ




そうだ。


きっと、ヒロは今までちぃちゃんに心配かけたから。
だからきっと、そのぶんちぃちゃんを大事にしようとしてるんだ。



……聞きたく、ないな……。



ズキン

ズキン






『冷静になれ』



心ではそう思っていても、それとは裏腹に震えてしまう唇。
ちぃちゃんにわからないように、キュッと強く結んだ。


だけど、あたしが唇を結んだその時、同じタイミングでちぃちゃんはあたしに視線を移した。




「……でもね」