嘘。

……嘘。


――……嘘だ。









「ユイ?」


誰かがあたしの肩を、強く掴んだ。


「ユイッ、おい?」


グラグラと揺さぶられてる。



やめてよ……。



「しっかりしろよ? どうしたんだよッ」



焦点の合わない視界の中に、怖い顔した大樹。


なによ、そんな顔して。



「……聞こえてんのか?……ユイ」

「……」



聞こえてるし。

そんな大きな声で、叫ばないでよ。


頭、痛い。
ガンガンするの……。




「なんだよ、だから嫌だったんだ。 こうなるの、わかってたんだよ」

「…………」



ふわっと体があたたかくなる。
肩を、頭をグッと押さえられて、あたしは大樹の胸の中にいた。


大樹の肩越しに、綺麗な茜色の夕陽が見える。
病院に続く街路樹。
その道沿いの街頭が、灯りだした。


でも、それも……
まるで夢の中の出来事みたい。




「……うぅ……」




だって、だって……。





『その子、誰?』



そう言ったの?


ねえ、ヒロ……

あたしの事、忘れちゃったんだ……。





ヒロは、意識を取り戻したかわりに
魂の時の記憶を、無くしてしまった。