『バターン』
扉が閉まる音が、異常に耳に響く。
声をかけるまもなく、ちぃちゃんは大樹までも連れて出て行ってしまった。
なんで?
「……」
ドキン
ドキン
ど、どうしよう……いきなり2人きりになって、心の準備が出来てない。
震える体をキュッと抑えるように、あたしは胸に手を置いて振り返った。
「…………」
「…………」
ヒロは少し苦しそうに顔を歪めながら、体を起こしていて。
「ヒロ!」って思わず口にしながら慌てて駆け寄ってヒロの肩を抱いた。
「大丈夫なの? 体、平気?どこも痛くない?」
身をかがめたヒロは、あたしの言葉を聞いてクスリと笑った。
「……あ、あの……」
「うん、大丈夫だよ。 体のあちこち軋む感じだけど、頭はやたらすっきりしてる」
ドクンッ
そう言ったヒロはあたしの顔を覗き込んだ。
肩をすくませたヒロの動きに合わせて、ユーレイの時より伸びた髪がふわりと揺れた。
目を細めたヒロを見て、我に返った。
あたし、今しっかりとヒロを抱きかかえる格好になってる。
もうすぐそこにヒロの顔がある。
うッ!
わわわッ
あたし、ど、どうしようッ!
まるでりんごのように真っ赤になったあたしを見て、なんとも可笑しそうに頬を緩めたヒロ。
全神経が、ヒロに触れてる肌を刺激した。
――……だって。
少し骨ばった肩は、あったかくて。
こんなに近くにいるから、それだけで体温が伝わってきて。
『ヒロが生きてる』って実感したから。
「……ヒロ……」
もう涙で見えないよ。
ヒロの顔……見えない。



