お父さんは単身赴任でいないし。 

お母さんは、午前だけパートの仕事。


だから、誰もいないはずの家。



あたしは声のした方へ、ゆっくりと視線を向けた。



…………あ…あ、あ…あああ。


「うあぁあぁああああッ!!!?」


ガタガタガタンッ



誰ッ

誰だ、あんたぁーッ


振り返った先には、気まずそうに俯く見知らぬ男の子。




下着姿のあたしは、驚いた拍子に扇風機を倒し、
床にへなへなと座り込んでしまった。




「……だ…だ……だ…」

「……」



彼は、目のやり場に困っているように、顔を背けたまま赤い顔をしている。



ちょっと待って…
だ、誰だっけ?


彼以上に、ゆで上がったあたしは口をパクパクさせるだけで、声にならない。


そんなあたしに、彼は話しかけた。




「ユイ、今日は休みなの?」

「へッ!?」



な、なんでそんな事聞くのよッ

なんであたしの名前知ってんのよッ