「……」
だけど。
あたしは、そんな大樹にかける言葉が見つからなくて
ただ同じくらい真っ赤になって俯く事しかで出来なかった。
――ガチャ!
「大ちゃん、これをお母さんに渡して欲しいんだけど……ってあんた達そんなとこに突っ立って、なにしてんの?」
なんのためらいもなく開かれたドアから顔を覗かせた母は、手に野菜の入ったビニール袋を下げてあたしと大樹を交互に見た。
「べ、別に……ね? 大樹」
「え?! あ、いや……も、もう帰ろうかと思って」
ぎゃ!
大樹まで、どもりすぎでしょー!
不自然な程動揺しながら、あたし達は視線を合わすことなく言葉を繋いだ。
「あら……もっとゆっくりしてけばいいのに。久しぶりじゃない」
そう言って、ジロっと目を細めたお母さん。
うあ……なにその目!!!
あたし達、別になにもないもんッ!
「それじゃ大ちゃん、おばさんによろしくね」
「ちゃんと言っとく。 お邪魔しました…………じゃあな、ユイ」
玄関で靴を履いた大樹は、お母さんに愛想よく笑顔を振りまいて。
それからあたしに視線を落としながら言った。
「う、うん! また、学校でね」
あたしは母の視線を逃れるように、大樹を追って外へ出た。
家から一歩外へ出ると、ムッとした熱が体を包んだ。
ここはまだ屋根があるのに、アスファルトの照り返しと蝉の合唱が余計に暑さを倍増させるようだった。
入り口まで行くと大樹はふとその足を止めてあたしを振り返った。
「……さっきの話の続きだけど」
「へ?」
突然の大樹の言葉に、キョトンとその瞳を見上げた。
……さっき?



