今すぐぎゅっと、だきしめて。


ドクン……

ドクン…………



聞いたことないくらいの心臓の音。

あたしのもの?

それとも……大樹?




どうしよう……

どうしたらいいの?



大樹は、何をするわけでもなくて
ただあたしの髪に顔を埋めていた。



「…………」



嫌ならそう言えばいい。
だけど、そうしないのはなんで?

なんでなんだろう……


大樹は友達なのに。


親友なのに。




大事な、大事な。




顔の横に置かれた大樹のグーが

なんだか歯痒くて
どうしよもなくて
息をするのも苦しくて。


これが、人の重さなんだと……


わかった。




あたしは一体どうしたいんだろう。

ここで、大樹を拒否すれば
彼はあたしの思いに少なからず気づくはず。

大樹の気持ちに
応える気はないのに。



あたしは……なにしてるの?






「―――ユイー?」



その時、階段の下からあたしを呼ぶ母の声。



「――…!!」



その声に弾かれるように大樹は体を離した。



「ご、ごめん!!!……俺……」

「……」



慌てて立ち上がった大樹は、短い髪をグシャグシャっとかき回してその手で顔を覆ってしまった。

耳まで真っ赤だし。