痛く……ない?
勢い良くひっくり返ったと思ったのに痛みは全然なくて。
柔らかな感触にあたしはそっと目を開けた。
……あれ?
天井が見えると思った。
けど、その予想は見事にはずれ、目の前は真っ暗。
今のこの状況を理解しようと
頭をフル回転させていた
その時―――……
「……ってぇ……」
真上で声がして、あたしはその声を追った。
あたしが見上げるのとほぼ一緒に、視界が開けていく。
見えなかった天井が見えた。
え
あれ?
……ぎゃぁあああ!!
どどど、どうして
だだ、大樹ッ……!?
「……だ、大樹……ごめん……あの……」
「…………」
いきなりの至近距離に戸惑いながら、なんとか言葉を紡ぎだす。
バチっと目が合ったのはあたしに覆いかぶさるように、片手で自分の体を支えた大樹。
その表情は、痛みを堪えてるみたいだったのにあたしを捕らえた瞬間、みるみる赤く染まっていく。
切れ長の瞳は、大きく見開かれていてその中に大樹に負けないくらい
真っ赤なあたしの顔。
なんてマヌケなんだ。
その瞳に映りこんでる自分の姿から思わず視線を背けた。
バランスを崩したあたしは、前にいた大樹を巻き込んで
ベッドに倒れ込んだらしい。
そのおかげでどこも怪我しなかったんだけど……
だけど……だけど、この状況は……
「……ありえねぇ」
搾り出すような囁く声が耳に届いた瞬間
大樹は何を思ったか、あたしの体に自分の体を重ねた。
「大樹!!? ……ちょ…なに?」
「うるせぇ」
「……え?」
首筋をくすぐる吐息。
初めて知る感覚に、思わずビクリと震えた。



