今すぐぎゅっと、だきしめて。



「……あたし……」


怖い。

そんな感情に襲われて、あたしはキュッと瞼を閉じた。


この先を言ってしまえば、大樹は二度とあたしに笑顔を見せてくれないだろうから……。



そう思うと、鼻の奥にツンと痛みが走って、硬く閉じた目が熱い。



どうしよう……
ここで、泣いちゃいけないのに!

もう無理……


言葉より気持ちが先走ってしまいそうで唇を噛み締めた
その時だった――……





「あのさぁ!」

「へ?」


静かで固まっていた空気を揺るがす程の大きな声で言った大樹は
ズズズと音を立ててグラスの中身を飲み干した。


「ユイって、すっげーアホだよなッ!」

「はあ!!?」



はぁぁあ!!!!?

なな…………なにそれ!!!



いきなりアホと言われ、意味がわからずにポカンと口を開けたままのあたしを横目で見ると、大樹はフンと鼻で笑った。


そのバカにした笑いはなんだー!?


「よいしょ」と言いながら立ち上がった大樹はうーんと両手を持ち上げると楽しそうに笑った。



「ちょ……ちょっと大樹?」

「帰るよ。 これ、ごちそうさま」

「え? 帰るの?」


さっさと部屋を出ようとする大樹を慌てて追おうと立ち上がった。



……までは、よかったのに。





「……わッ!」

「え……おわッ!?」