昔からの腐れ縁の大樹。


だけど、昔会ったくらいでそのお兄さんの顔は思い浮かばい。




「兄弟揃って、スポーツバカなんだから……」



そう言った奈々子は、そのまま深い眠りに落ちたようだった。

体を起こして、あたしは奈々子の顔を覗き込んだ。
少しだけあいた唇の間から白い歯が覗いている。

穏やかな寝息が聞こえ、奈々子から視線を逸らした。

薄い夏布団を両足で下へ押しやって窓の方へと向かった。


列をなして並んでいる布団を踏まないように進む。
窓際に備え付けてあるソファに腰を落とすと、大きな窓の外を眺めた。



「わぁ……綺麗」



そこは、都会では見ることの出来ないくらいの
満天の星空


まるでそれぞれ生きているかのように
キラキラとその輝きを放っている。


………。




『――……好きだよ』




さっきのヒロの告白を思い出してしまって
あたしの体は、ボボボと音をたてて熱くなる。


早く冷めるように、両手で頬を覆うとそのまま瞼を閉じた。



あたし達、また……キスしたんだよね?
幽霊とのキスがファーストキスって、ありえないし。


そう思いながらも、なぜか勝手に口元が緩んでしまう。


「……」


ねえ、ヒロ――……



あたしもね? ヒロが好きだよ。



ヒロは、このままずっとあたしの傍に居てくれるんでしょ?



今度姿を見せてくれたら
思い切って聞いてみよう。


ユーレイでもいい
傍に居て欲しい

触れられなくてもいい
キスが痛くても構わない


傍にいて、あたしだけに笑っていて欲しい




――――…だけど


そんなあたしの願いは、すぐに散ってしまったんだ。