今すぐぎゅっと、だきしめて。




「――てかさ、ユイは自覚なさすぎ。 花火大会ん時も、今日もそうだけど……俺らがいくら気を張ってても、ユイはそう言う事に勝手に巻き込まれてんだもんなあ」

「大樹……どうして」


そうだよ、どうしてあたしに霊感があるなんて知ってるの?


「んー…わかんないけど、時々感じるわけ。 なんかいるーって。 よく言うじゃん?身近に霊感強いヤツいると周りにも影響するって。 たぶんそんなとこだろ?」



大樹はそう言うと、あたしの隣に腰を落とすと、ドカッと足を投げ出した。

そして、頬杖を付いたままチラリとあたしの顔を覗き込む。


あたしと視線がぶつかると、口の端をクイッと持ち上げて悪戯な笑みを零した。



……うッ! なんだよぉ



「だからぁ、今日も変な事にならないように、俺らより霊感あるって噂の和田にユイを見張ってるように頼んだんだよ」


「そ、そうなの?」



見張るって……どうなのよ、大樹!




慌てて和田君を見上げると、その張本人は「んー、まあ」と言葉を濁した。



「俺なんか、そう言う体質ってだけで安達みたいに“見える”力があるわけじゃないんだから、意味ないって言ったんだけど……」

「ほーんと、余計に事態悪化させただけだったなあ」

「…………篠原に言われたくないね」

「言うじゃねーか」



うわ……

二人の間に、火花見えるんですけど!



その時
フワッと鼻をくすぐる甘い香りと共に、目の前にホットココアが差し出された。


顔を上げると、奈々子が身を乗り出してあたしの手にそれを持たせてくれた。




「ほら、これ飲みな?」

「……ありがと」



あたしは小さく微笑んでそれを受け取ってまだ湯気が立ち込めるカップに口を付けた。



「おいし……」



奈々子が入れてくれたホットココアは、心を落ち着かせてくれた。


ココアの湯気に隠れて
奈々子の真っ黒で艶のある髪が見え隠れする。



「…………」






髪……長い、髪…………