ヒロの言葉を待つ。

あたしの耳には確かに聞こえる
ヒロの小さな息遣いと
遠慮がちにその存在を伝えてる虫の声


それから


ドクドクうるさい心臓の音。




黙ったまま
ヒロは不意にその視線をあたしと絡ませた。



――ドキン



ヒロの手がゆっくりと伸びてくる。
それはまるでスローモーションのようで
あたしの視界を埋め尽くした。

まるで雪でも触るみたいに
あたしに触れる、ヒロの手。



――…トクン トクン



あたしは彼の手を確かめるように
そっと目を閉じた。


そして
ヒロが小さく息を吸い込んだ気がした。







「ユイ……抱きしめてもいい?」





……え?





「……えぇ!?」



バッと顔を上げると、驚いたヒロは目を丸くして手を自分の顔の位置まで持ち上げた。


「だ、だ、ダキ……!!?」


金魚さながら真っ赤になったあたしは口をパクパクさせ言葉にならない声を出す。
そんなあたしを見て、瞬きを繰り返すヒロはなんとも複雑そうに顔をしかめた。


なに、その笑いを堪えたような表情は!!