見上げた先にいたのは
眉を下げて切なそうに目を細めた和田君。

その姿は、紛れもなく和田君なのに
あたしにはヒロの姿がはっきりとわかった。


ヒロが、あたしに
伝えようとしてる言葉。


それを聞きたい。


だけど


聞くのも怖いの……




「あんな態度とってごめん」



ヒロはそう言うと「はぁー」と大きく息を吐き出して
頭をクシャッと掻いた。



「急に怖くなったんだ」



ポツリと言ったヒロの横顔が
木々の隙間から零れ落ちた月光で優しく揺れる。


あたしはまるでみとれるみたいに
黙ってそれを見つめた。



「やっと……

やっと、ユイの傍に……
ユイに触れられるとこまで来たと思ったら、急に怖くなった」



――…ドキン


顔を背けたままのヒロから目が逸らせない。



「怖いって……どうして?」



あたしは、すごく

ヒロに会いたかった。



あの日
ヒロが笑って消えた日。


すごく哀しかった

もう二度と会えない人なんだって
すごく悲しかったんだよ?



だから
またヒロがあたしの前に姿を見せてくれて
本当に嬉しかった。

不本意かもしれないけど
このまま……

このまま、ヒロがずっと傍にしてくれたらって。



あたし、最低な事も考えたのに……。



ヒロは何が怖いの?