もぉ、むかつく!

むしょーに腹が立つ!!


大股で先を行くヒロに追いつくと、そのまま追い越して獣道に入った。


「え……ユイ?」


背中にヒロの驚いた声が届いた。
でも、あたしはそれをつき返してそのまま歩き続けた。


鬱蒼と木々が生い茂っていて
今まで明るくあたし達を照らしてくれていた月の光が届かなくなった。


急に光を失って
体が対応できずにぼんやりと視界をうつす。


でもあたしはそんなの構ってられなった。


だって
背中に痛いほどのヒロの視線を感じるから……



怒ってしまった事をもう「後悔」してる。



どうして素直になれないんだろう……


いつまでこうしてヒロといれるかわからないのに。



そう頭では思っていても
体が言う事聞かないよ……




ザッザッ――と雑草を掻き分けて進む。


もうッ なんでこんなに草が生えてんのよ!


ショートパンツなんか履いてくるんじゃなかった。
さっきからあたしの足を鋭い葉が牙を剥いていた。


もしそれを気にする余裕があったなら
痛い思いもしないで済んだかもしれないのに……



ばかばか…ヒロのばか!



「……ユイ! 待てよ……なんだよ、いきなり」

「……別に」

「別に……って、なに怒ってんだよ」

「怒ってなんかないよ」

「じゃ、どうしたんだよ?」



簡単にあたしに追いついたヒロが、あたしの腕を掴もうと手を伸ばした。


「……なんでもないってばッ」




――バシッ


今のあたし、すっごく可愛くない。
最低で意地っ張り……


今にも泣き出しそうなのを見られたくなくて、あたしは咄嗟にその手を振りほどいていた。


だけど


その瞬間、あたしの視界はグラリと反転してそのまま
勢いよく地面に倒れこんでいた。