ドキン ドキン


なんで黙ってるの?

ど、どうしよう……

よくわかんないけど、心臓が痛いよ……




押し黙るヒロを見上げて、首をかしげたあたし。

そんなあたしを見て、ヒロはふいと視線を逸らした。


……なによ



そして、そのままヒロは身をひるがえして帰り道に足を進めた。


「ちょ……ヒロ! なによ、なんか言いかけてやめるのやめてよ!」


あたしはそう言って、ヒロの腕に触れた。

一瞬だけビクリと震えたヒロは
グラリとバランスを崩しながら、視線だけをこちらに向けた。


「…………」


さも迷惑そうに片眉をクイッと持ち上げて「はぁー」と小さく息を吐いたヒロは、少し考えた後口を開いた。


「やっぱダメだ」

「…は?」


一人そう呟くと、絡んでいたあたしの手を強引に引き離した。


「ヒロ!」


まるであたしの呼びかけなんか聞こえていないように、ヒロは黙って先を歩いていく。

その体は、もうピンク色ではなくて夜の闇に溶けてしまいそうで
あたしは唇をキュッと噛み締めた。



……。


やっとあたしの前に現れたと思ったら……
なんなのよ!

勝手に一人で納得しちゃって。
あたしには何がなんだかわかんないじゃん。


も……いい。





「……何も言いたくないなら、いいもんッ」

「はあ?」