今のこの状況がおかしいとか
そんなの関係なくて。
あたしはただ
ヒロがそばに来てくれた事が嬉しかったの。
怖かったんだ
逃げちゃいたいくらい
だけど
一人じゃなにも出来なくて。
だから
嬉しかった。
ヒロの体は、あたしの手が余裕で回っちゃうくらい
細くて無駄な贅肉なんかない。
これ以上力いっぱい抱きしめたりしたら
ポキッて折れちゃいそうなくらいだった。
あたしが泣きじゃくるあいだ
ヒロは何も言わず、ただ黙ってあたしの髪を撫でてくれてた。
それだけで
あたしの心臓はトクトク穏やかな音を刻んだ。
降り注ぐのは
夜空いっぱいの星空
どこまでも続く
果てしない大海原からは
あたし達を包み込む柔らかな月風
耳に届くのは
心音と同じように穏やかな波の音
それから
ヒロのぬくもり
ギュッと額を押し当てたその胸板から
確かに「あたたかさ」を感じる。
「……」
「……ユイ」
ヒロは耳元でそう囁くと
肩にそっと手を置いてあたしとの距離をとった。
わわわ…
なんか、照れる!
さっきは驚きと嬉しさで思わず抱きついちゃったけど
あたし、物凄く恥ずかしくないかな。
そ、それに迷惑だったら……
「…………」
そう思った瞬間、急に怖くなってあたしはキュっと瞼を閉じた。



