勢いよく振り返ると、やっぱり和田君はそこにいて

あたしをジッと見つめていた。



「もーーッ! いい加減にしてよッ
早く行ってこんな事終わらせようよ」



重たいような、ちょっとだけ背筋が冷たいような空気を吹き飛ばすように
あたしは大声を出した。

そんなあたしの言葉なんか聞こえていないと言うように、
和田君は静かに言った。



「……じゃあ聞くけど。 後ろにいるやつ、誰?」

「……へ?」



……後ろ?



「気づいてないとは言わせないよ? 安達ほどの霊力があるなら、見えてなくても気配くらい感じてるはずだし」



口の端をクイッと上げて、和田君はあたしではないどこかを見つめている。



……後ろって……なに?

なんかいるの?


や……





「やだーーーーッ!!!!!」




ヤダヤダヤダ!!!!


もう嫌だ!



なんで、あたしがこんな事しなくちゃいけないの?

なんで……

なんでこんな怖い思いしなくちゃいけないのよぉぉおッ




あたしは、思い切り足に力を入れて地面を駆けた。



視界がグラリと歪んで、前が見えない。

鼻の奥が痛いし
喉だって痛い。

頬を伝うのは、涙なんだってわかるけど
今のあたしは、ただこの場から……


和田君から離れる事しか考えていなかったんだ。