佑梨は模索していた。
それは出会ったときから分かっていた。
彼女は彼女なりに、もがいてるんだってこと。


ちゃんと思うままに笑っていいのか、素の自分を出してもいいのか、さらけ出したら相手に嫌われるんじゃないか、捨てられるんじゃないか。


そんな不安が入り交じったような、なんとも言えない表情をする。
本人は絶対に無意識なんだろうけど。


それを花見のときに指摘したら、ものすごく動揺して怒っていた。


正直言って、怒ってる彼女を見て内心ホッとした。
能面みたいに感情を隠して笑顔の仮面をつけてその場を取り繕うかと思ったから。
そうじゃなくて怒りをあらわにしたので、なんだ、この子は大丈夫じゃないか、と思った。






軽い気持ちで提案した『偽恋人』。
時々文句を言ってくるけど、食事に誘えば普通に来る。
まるで本当の恋人みたいに。
おかしな関係だ。


俺は彼女を利用している。
自分のプライドのために利用している。


家族や親戚にどうこう言われないため、とかなんとか適当な理由をつけたけど、実際は違う。
全部、俺の都合のため。


だから彼女が合コンに行こうが、婚活パーティーに行こうが、俺には関係ない。
むしろここ最近の彼女は仮面が少しずつ剥がれていって、わりと素直に笑うようにもなってきた。
それなら他に好きな人でも見つけて、そっちに行った方が無駄にもならない。


だけど、俺なんかよりよっぽど傷ついてる彼女は、いつも危なっかしかった。


おそらく恋愛においての常識を知らない佑梨。
それは時に起こるイレギュラーも予想出来なくて、余計に傷つく可能性を秘めていた。