「うん、出席させてもらうよ」


そう、答えるしかなかった。




欠席するなんて答えようものなら、圭からもしつこく連絡が来るに違いない。
「なんで?」「どうして出席出来ないんだ?」「俺たちの晴れ姿見てくれよ」と、そんな風に矢継ぎ早にまくし立てられるに決まってる。


俺たち3人は、切っても切れないほど縁深い幼なじみだからだ━━━━━。










11月13日、日曜日、大安。


この日までにせめて自分が惨めにならないようにしなくては、とそればかり考えるようになった。


中学の時から圭と付き合っていた沙織が、俺と長年浮気していたなんて彼に知られてはならないことだっていうのは百も承知だったし、彼にそれを言うつもりもなかった。


昔から女に人気のある圭がしょっちゅう沙織を不安にさせて、その不安を俺が拭う役目を負ってきた。
でもそれは、もう終わりなんだ。
終わりにしなければならない時が来たんだ。




大切な幼なじみ2人の門出を笑って見送れるように。

偽物でいい、仮初めでいい。


俺にもちゃんと「恋人」と呼べる存在がいるんだよ、と沙織に言えるように、誰でもいいから適当に付き合える人を探そう。


そう思った。






そういえば、叔父に言われていた見合いの日はもうすぐだ。


相手の女がどんな人かは会ってみないと分からないけど、見合い話にホイホイ乗っかってくる女だ。
俺の「偽恋人」という提案をどう思うか少し微妙なところではあるが、まぁ言うだけ言ってみよう。


それなりに身なりの整った女なら、誰でもいいんだけど━━━━━。


ほぼ投げやりな俺の考えは、宙にプカプカ浮いてどこかへ飛んでいった。