確かに親友が、嘘みたいな偽装婚約したなんて聞いたら、私だってああなるだろう。
それでも、どうしても諦められなかったのは、今の私にとって昇進が全てで、私を形作っている原動力だったからだ。
「それで?相手の人は、どんな人なの?そんな提案してくるくらいだから、きっとまともじゃないでしょう?」
「それが…、結構助かってるってゆうか。今、料理を教わってる。」
「はぁ?令ちゃんが料理を?………あり得ない。」
(親友でさえこの反応か………私、仕事以外の生活能力…底辺なのかも。)
「少しずつ、作れるようになってきてるんだよ?」
「ふ~ん。令ちゃん………彼氏いないからって、気まぐれでその人に手出したらダメだからね?絶対、幸せになんかなれないんだから。」
「幸せね~…一体何を持ってして幸せってゆうの…?幸せは人それぞれでしょ?結婚だけが、幸せってわけじゃないし…彼には恋人要素求めてないから。」
「私のエゴかも知れないけど、令ちゃんには幸せな家庭を築いて欲しいの!!ずっと一緒にいたから…令ちゃんの事ずっと見てきたから……だから、私に影響されて、独りでいることないんだよ?」
俯きそうになるから、私はとっさに彼女の両頬を摘まんで、上に引き上げた。
「痛ひよ~…令ちゃん。」
「何であんたが、そんな顔するの?………ほら、礼音が見てるよ?笑って…?」
「ごめん。」
「大丈夫!もう少ししたら、ちゃんと終わらせるから。終らせる事なんて簡単よ?お互い楽しんでるし、何てゆうの?兄弟みたいな?」
「もう、令ちゃんったら、全然反省して無いんだからぁ!」
友は心配してくれたけど、私は上手く立ち回れると本気で思っていた。



