Pathological love


何故か親近感を覚える雰囲気に、少し安心する。


「秋山さんは、どうしてここに?」


「あぁ………本当は私に赤坂部長からオファーがあったんですよ。でも、その気がなくて一回断っていて、その後、相手があなただと聞いて飛んで来ました。」


ニッコリと笑う笑顔は、何を考えてるのか全く読めない。


「そうですか。………お陰で助かりました。」


「どういたしまして。折角ですし、自己紹介がてら、このまま何処か飲みに行きませんか?」


「ええ…分かりました。私も助けて頂いたお礼もしたいので行きましょう。」


「じゃあ、私の行き付けの店でもいいですか?」


「ええ…構いません。」



秋山さんの車で向かうことになったので、当然の如く助手席に座らせられた。

移動中、私はひたすら混乱した頭の中を整理していた。

男に襲われそうになったのは、これで二回目。

本当に怖かった。

いまだに心臓はドクドクして身体は強張っている。

手足は冷たくなって、小さく震えていた。

秋山さんの手前、冷静を装っているけど、本当は今すぐ家に帰りたかった。


(はぁーー……ボンちゃんとジリに会いたい………。)


連れてこられたお店はショットバーで、間接照明があちこちで暖かい雰囲気を作っていた。

カウンターに座ると、バーテンダーが空かさず私達に近づいてきた。

まだ若く中性的な綺麗な男の人だけれど、妙に落ち着いていて、ミステリアスな雰囲気を醸し出している。


「いらっしゃいませ秋山様。いつもので宜しいですか?」


「あぁ。」


「そちらのお客様は、初めてのご来店でございますね?ありがとうございます!この店のオーナー兼バーテンダーの綾野と申します。」


「私は水川です。」


「初めてのご来店記念に、一杯ご馳走しても宜しいでしょうか?」


「いいんですか?」


「勿論です。少々お待ちください。」


綾野は綺麗な笑顔を残して、カウンターに戻って行った。