Pathological love


「あの………すいません!!………今回の話は無かったことに………ー」


断りの言葉を口にした瞬間、肩を強く掴まれ振り向かせられた。


「きゃっ!!」


「その歳まで結婚してないんだから、行き遅れてるんでしょ?だったら僕でいいじゃないですか………ね?」


鼻息も荒く、至近距離で迫って来る男に身動きが取れない。

その間にも男の顔は近づいて来る。


(うぅーーーーー………もう、無理っ!!!!)


半分諦め掛けた瞬間、後ろの襖が勢いよく開いた。


「わぁっ!!!」


襖ギリギリまで来ていた私は、その反動で後ろにバランスを大きく崩した。

後ろの人に寄り掛かると同時に、目の前の男から守るようにバッと片腕が私を包んだ。

見えなくなった先で、ドサッと何かが落ちる音がした。


「おっと、………この状態…もしかして、お邪魔でした?」


「いっいえ!!」


その男性は難なく私の身体をグッと引き上げて立たせると身体を離した。


「何なんだっ!?お前はっ!!」


いつの間にかテーブルの近くで倒れている山田が、喚き散らす。


「そんな事、言っていいんですか?強姦魔のくせに。」


「強姦魔っ?!なっ何を言ってんだよっ!!その女が先に俺を誘ってきたんだ!!そうだろっ??」


「違うわよ!!私は断ったのに、あなたが勝手に熟女好きだって、興奮して襲ってきたんでしょ?」


「何なんだよっ!この女っ!!赤坂さんの紹介だから顔を立ててやったのにっ!!」


一瞬、赤坂部長の顔が過る。


「………………………………。」


(どうしよう………………ここは謝るべきか………。)



私がグルグル考え倦ねていると、助けてくれた男が山田に近づいて何かを耳打ちした。

すると、さっきまで騒いでいた山田は、悔しそうに私を睨むと黙って帰って行った。


「大丈夫ですか?」


「あの………あなたは?」


「酷いなぁ………まだ覚えられてないんだ。この前、挨拶したデザイン部の秋山 連理です。」


「あぁ、新設の?すいません!!あの時は眼鏡をしていなかったもので視界がちょっと………。」


「別にいいですよ。それじゃあ、今日は覚えてください。」


一重なのに妙に大きくて印象に残る鋭い眼差し、茶髪のゆるふわの髪は正にデザイン部ならではのラフ感で、営業マンではまず見ない髪型だ。