「秋山代表?」
「そうです!秋山さんのお母様です。まぁ、血は繋がってませんけど。」
「!!?」
聞き慣れた苗字につい聞き返すと、加藤ちゃんは驚くべき事実をさらっと告げた。
「本当に?さっきの方が?」
「はい、確かです。ご自分で仰ってましたから。」
「………何か凄そうですね?」
美保ちゃんが此方を気にしながらも、加藤ちゃんに話し掛けている。
「フフフッ仕事には一途ですから、確かに妥協はしませんね。でも、熱意があるし、とても素敵なものをあの手で作るんですよ?」
何を思い出したのか加藤ちゃんの顔が綻ぶ。
それを切っ掛けに私の身体は立ち上がっていた。
「すいません!!私………少し抜けます!!美保ちゃん後は頼む!!加藤ちゃん、秋山代表は今何処に?」
「打ち合わせは終りましたから、もうお帰りになる所かと………。」
「分かった!!」
私は名刺を片手に持ったまま駆け出した。
これはチャンスなのかも知れない。
私に与えられた、最後の切り札。
形振りかまっていられない。
会社のロビーが見えて、その先のガラス貼りのエントランスで漸くその姿を捉えた。
「すいませんっ!秋山代表っ!!秋山代表っ!!待ってくださいっ!!」
私の大声に、取り巻き達も振り返る。
好奇の目に晒されながら、私は怯まずただその人だけを見据えた。
「息子さんの事でお話があります………二人だけで………お話し出来ますか?」



