Pathological love


キーケースを開けると一つだけ古びた鍵が入っている。

ずっと昔からある鍵だけれど、ずっと使っていない鍵。

すっかり他の鍵と擦れ合って、傷ついて色が変わっていた。


「………もう使うことは無いと思ってたのに………。」


住宅街に一軒だけ不思議にそびえる古い洋館。

生い茂った植木が長い間帰らなかった月日を窺わせた。

鍵を開けて中に入ると、懐かしい実家の匂いがして、それを引き金に色んな感情が沸き上がる。

殆どが嫌なイメージや、悲しいイメージしか浮かばなくて俺は振り切る思いで自分の部屋へと向かった。

長い廊下の奥の扉、広い屋敷の中でも外れの方に俺の部屋はある。

変わらない扉を開けると、やはり出ていったままの状態で残っていた。

長年放置してた割には綺麗なままだ。

資料になるデザイン関係の本は学生の頃から買い貯めていて、本棚に入り切らない雑誌類もいっぱい積み重ねてあった。


「うわっ…懐かしい………。これ高校の時のだ。」


スクラップしてあるファイルを手に取るとあの頃を思い出す。


「わー………ダッセー………。」


下手くそなデッサンやイメージの殴り書きなどがたくさん描いてあった。

暫くそんな調子で目的から脱線していると、あっとゆう間に時間が過ぎていて、聞き慣れた電子音が過ぎた時間を告げる。


「やべっ!!もう、こんな時間?!帰らなきゃ………。」


探しておいた目当ての資料をバックに詰め込むと、急いで玄関に向かった。


(これ以上はダメだ…早く出ないと………ー)