Pathological love


呼び止められて我に返ると、走ってきたのか息を弾ませた奏也さんが後ろに立っていた。


「どうしたんですか?」


「はぁ…はぁ…あの………はぁ………今日、帰ったら………お祝いしてやってください………。京子さんの事は気にしないで大丈夫ですから………。」


「お祝い?」


「彼奴にとって、今回の仕事が日本での一番大口の契約となる筈です。だから、お祝い………してやってください……お願いします。…………それから、これ……俺からとは言わないでください。」


苦しそうに息をして、奏也さんはケーキの箱を差し出した。


「帰りに美味しいワイン買って行きます!」


私の言葉に安心したのか、奏也さんはうつ向いていた視線を私に戻した。


「ありがとう………きっと喜ぶ。」


いつも表情を変えない奏也さんが、珍しく微笑む。


「奏也さん………笑顔素敵ですから、彼に向けても笑ってください。笑顔の力って凄いらしいですから。私も受け売りですけど。」


「………考えておきます。」


白い肌をほんのりピンクに染めて、奏也さんがまた目を逸らした。

連理…あなたを大事に思っている人はいっぱいいる。

私は何だか胸の辺りが暖かくなった気がした。