Pathological love


京子さんはまたフォークにケーキをたっぷり掬ってほうばり始めた。


「あぁ~腹立つ~!!」


京子さんが溢したクリームを拭きながら、奏也さんは続けた。


「最初は完全にうちへの単独オファーだったんですけど、急にコンペにするなんて言い出して………それでも白精堂の担当者には、殆どうちで決まった様なものだからと言われて形だけのコンペと思ってたんです。そしたら、この結果で………。当日まで競争相手が連理だとも知りませんでした。俺達を見て驚いていたから、恐らく彼奴も同じでしょう。」


「何か裏で糸引いてる奴いない?」


「どうでしょう。うちは完全広告枠とイベントのみの契約ですから、デザイン関係は全く分からないんですよ。」


「とにかくあの子には気を付けるように言っておいて。雁字搦めにされて、足下救われない様に………ね。」


いつもと違って真剣な京子さんの瞳が冷たく映って、私は何だか怖くなった。

京子さんのデザイン事務所からの帰り道、私は色々考えていた。

新嶋 美鈴…彼女が何か細工をしたのか?

社長令嬢だし、彼女が父親に頼み込めば、もしかして出来レースも仕組めたのかも知れない。

それなら何の為にそんな事を?


「あのっ!!待って下さい…令子さん!!」