どのくらいこうしていただろうか、漸く感情を自分でセーブ出来る様になって、私は立ち上がった。
藤森と飲みに行く約束をしていたけれど、こんな顔じゃ無理なことは分かっていた。
キャンセルのメールをして、帰ろうと振り返ると、窓からの強い陽射しで目が眩んだ。
「眩し………。」
窓を背に、夕日の逆光の中、誰かが立っている。
(連…理………?)
向かってくる人物に私は、走り出した。
「ごめん…!!さっき言ったことはー」
視界が滲む中、近寄ると、懐かしい声が響いた。
「久し振り………令。」
低くて、落ち着いた心地いい声。
急に目の前から消えてしまったあの人。
「………………徳永………さん…………?」
「令……ずっと会いたかったよ。その為に今まで頑張って来たんだ。やっと、本社に戻れた。」
「一体どうゆう事ですか?どうして、急に…………!」
「ちゃんと説明する。でも、その前にこれだけ言わせてくれ。長い間、独りにさせてごめん。」
「言っている意味が分かりませんっ!!どうして、今頃ー」
「結婚しよう。」
夕日が陰って、社内の蛍光灯が点灯する。
青白い光に照らし出されたその人は、紛れもなく私が愛した人だった。



