鳴り響く電話の呼び出し音。
カタカタと忙しなく聞こえるタイピング。
オープンスペースでの、打ち合わせの声。
様々な音が織り交ざって、私の耳に押し寄せてくる。
いつもなら、聞き耳を立てて、その中から大体の事は把握している筈なのに、今日は朝から一向に私の耳は受け入れようとしなかった。
あのホテルの一件からとゆうもの、私はこのあり様だ。
かろうじて、自分の仕事をこなす程度で、部下の動きにまで目をかけてやれない。
気を緩めれば、直ぐに連理のあの時の顔が浮かんできて、年甲斐もなく、キュンと胸が苦しくなった。
私の中で、もしかしてとゆう考えが芽生えて、浮き足立つ気持ちが抑えられなかった。
「………令子。…………おいっ!令子!!落ちるぞっ!!」
「はっ?えっ?!藤森………?」
足を組んで膝に置いていた手が引っ張られた。
「危ねーな!!火傷するぞ!!朝から、何ボーッとしてんだよ?」
引っ張られた手に目をやると、煙草の灰はギリギリまで燃え尽きていた。
藤森が、私の指から煙草の吸い殻を取って、灰皿に投げ入れると中で小さくジュッと音がした。
「ああ、………ごめん……ありがと。」
「うわ?何?やけに素直じゃん……気持ち悪っ!!」
「あ………うん、ごめん。」
藤森が、大きな溜め息をしながら背もたれに寄り掛かると、横目で私を見た。



