叫ぼうとしても、全く声が出ない。
(連理………連理………助けて!!)
「連理ー!!」
「何だよ?」
「へぇ?」
「こんな時間まで、女が一人でフラフラすんな!!危ないだろ!!」
恐る恐る見上げると、息せき切った連理が私の両腕を支えていた。
「遅くなるなら俺を呼べよ!迎えにぐらい、行ってやるから………頼むから………心配させんな。」
「私を、………迎えに来たの?」
「何だよ………ジロジロ見んな。」
こんなにテンパってる彼を見たのは初めてだった。
連理には悪いけど、これが私の所為だと思うと、不謹慎にも嬉しく思ってしまう。
「フフッ………ありがとう…連理。」
立ち上がろうと、脚に力を入れると、全く力が入らない事に気づいた。
「どうした?早く立てって。」
「ごめん………腰抜けて、力が入らない………。」
「あぁーーー!!もう……… 」
連理は、面倒臭そうにしゃがみ込むと、私に向かって背を向けた。
「何よ………。」
「ほら………早く。」
連理が何をしてくれようとしてるのかは分かっていた。
それでも、どうしても恥ずかしくて素直になれない。
「何だよ?自分で乗っかる事も出来ねーのかよ。………本当、手の掛かる女。」
「いいって別に………あり得ないし………。」
「じゃあ、何?ずっとここに居るわけ?その方があり得ないし。」
連理は問答無用で私の腕を引き、背中におぶった。
道中、緊張と恥ずかしさで、私は暫く硬直していたけれど、そんな事はお構い無しに、彼は私に話し掛け続けた。
きっと、怯えていた私を気づかっての事だろう。
そんな風に思うと、ぽわんと胸が温かくなった。
歩く度に、ぶらんと揺れる自分の脚をただ眺めながら、何処か懐かしく温かい背中に、私はそっと顔を埋めた。



