田沼はぶつぶつと何かを呟いて、込み上げる笑いを堪えるようにうつ向いている。


その笑みには悪寒がした。


「やめてやめてやめてやめて!! こないでぇ!」


豹変した田沼の目は焦点があっておらず後退していく。まるで何かに憑かれているように。


後退した先は洋館の入り口の扉だった。


入り口には行ってはいけない、そんな予感がした。
止めなければならないのに……足がすくんで動けない。


田沼は扉をバンッと開けて一歩足を踏み出した。


「ひぎっ……」


田沼の短い断末魔と共に彼女は肉塊となった。


肉は四方八方に飛び散り、血が暗く光っている。


もう彼女を田沼と認識できないほど原型を留めきれていない。


「嘘……でしょ?」


つかの間の沈黙。


ついさっきまでは私達と話していた田沼が……死んだ。


あまりにもあっけないから現実味がない。


どうして? どうして田沼が?


《ネタバレのため、田沼聖さんは死んでもらいました! 残り25人。
ルールに反しますと死んでいただきますのでご注意くださーい》


私の質問に答えるかのようなタイミングのアナウンス。


「ふざけんじゃないわよ!」


アナウンスに怒るのはうちのクラスをしきる女王の日暮。


急に鼻孔にやって来る血の臭いに私は顔をしかめた。


泣くものもいれば嘔吐するものもいる。


怒ってくれたほうが元気があってまだいい。 


私は彼らの背中を擦り、落ち着かせた。


「つまり、逃げようとすると殺されるのか」


「何アンタ! 人が一人死んでるのよ! なんでそんなに冷静なのよ!?」


日暮は誠に罵声をあびせる。


一理あるがこのままでは何も解決できない。でもどうすればいいかも分からない。


頭の良い誠なら分かるだろうか?


「落ち着いて、日暮さん? 怒ってもどうにもならないよ?」


「うるさいわねっ野上静枝!」


前言撤回。元気だと何も進まない。


「田沼が一生懸命教えてくれたんだから無駄にしないためにも話し合おうぜ」


「分かったわよ……」


涼弥の言うことはきちんと聞く日暮。