おちえゲーム

お調子者の男子生徒青木は皆の沈黙を合図にして話を続けた。


「“おちえゲーム”は“おちえ”という女の子の幽霊をこの世にやってこさせるっていうゲームなのは皆知ってるよな?」


青木が問いかければ教室にいる大半の人が頷いた。


「火のないところに煙はたたない。このゲームまじもんらしいぜ?」


青木が声のトーンを落として言うと女子は可愛らしい悲鳴をあげる。


「だが失敗談ばかり書き込まれていたよ? どうせガセの一種だろう」


誠は冷静に言い放つ。


私も同意見である。幽霊なんて非科学的であり存在などしないはずだ…しかし、嫌な予感がしていた。
半ば言い聞かせるためにそう思ったのかもしれない。


すると青木はニヤニヤと笑う。待ってましたとでも言うように。


「は? それが違うんだよなー!」


青木がメモ用紙をペラペラと顔の前に近付ける。


「正規の方法ってやつがあるんだけどー、俺入手しちゃったぜ!」


青木はその紙を誠に投げて、誠も私に回して手順を確認した。


“おちえゲーム”


①紙に赤いペンで“おちえさま”と書きます


②その紙を四つ折りにし、床におきます


③複数人で手を繋ぎ「おちえさまおちえさま、捕まえて」と三回言います


⑤おちえさまに質問ができます


⑥再び複数人で手を繋ぎ「おちえさまおちえさま、さようなら」と言えば終了です


※間違っても一人でしてはいけません


「こんなのかよー。面白くねーな」


「だね、聞いて損した。帰ろうよ」


どこにでもある簡単な内容だった。普通過ぎて不満を吐き捨てて皆ゾロゾロと帰っていく。


私も興味はあったがそのまま帰宅路につくことにした。


正直な所、怖かったりもするんだけどね。


外は11月中旬だというのに風が痛いほど冷たかった。


「なんだか寒いね?」


「もう冬だもんな、ん」


少し先を歩いていた涼弥は手を差し出す。私はその手を握る。


幼いころからずっとこうしてきた。涼弥は優しい。


「おちえさまっていると思う?」


「いない。幽霊なんているわけないだろ」


「そうだよね」


涼弥の言葉に安心できた。そうだ幽霊なんていない。


手から伝わる人の温度に嫌な予感なんて吹っ飛んでしまった。