驚いてる結城くんなんて知らない。
聞いてくれなくても、勝手に話し続けるもん。
「入学してすぐの放課後...みんな帰っちゃってて、たまたまクラスに残ってた私が先生に雑用頼まれちゃった事があったの」
顔を上げて結城くんを見ると、顔はこっちを向いているのに、視線だけ逸らしている。
「断ればいいのに、断れなくて引き受けたんだけど、その教材で前は見えないし、すごく重くて...階段登ろうとした時に、段差が見えなくて転んじゃって。ふふっ...どんくさいよね」
「......」
「それでね、持ってたもの全部散らばしちゃって。ぶつけて足は痛いし、拾うのは大変で...。最悪だなって思った時、後ろから来た人が突然しゃがんで、一緒に拾い始めてくれたの」
すっごく些細なことなのに、たったそれだけなのに、嬉しかったのを今でも覚えてる。
初対面なのに「足怪我してるから」ってハンカチ貸してくれて、何も言わずに教材もほとんど持ってくれて。
雑用断らなくて良かった、とまで思えたんだよ?
「...この人、優しい人だなって。その日から、いつの間にか目で追ってた」

