目をこすってもう一度よく見るが、どんどん薄くなっていく彼の姿に私は涙目になっていく。



「また泣く……今年…………のに……」


「何言ってるか分からないよ! サンタさん! 消えちゃヤダ!」



 声すら聞き取れなくなって彼が消えてしまう怖さと不安が爆発する。


 本格的に泣きはじめた私の頭にほんのりと温かい手の感触を感じて顔を上げる。


 そこには困った顔をした彼がしっかりと見えた。



「あぁ、もうそんな頃合いか……俺の姿が見えなくなり始めたんだな」


「びっ、びえるよ……見える!」



 私はたまらず彼に抱きついてその存在を確かめる。なんとなくだけど、もう彼を詮索するのは止めようと思った。


 彼は何も言わずに私の頭を撫で続け、泣き止んだ私の顔を覗きこみ銀の笛を見せて笑う。



「今年も乗るだろう?」


「うん! それ、吹いてみたい!」


「ダメ。今年はじいさんの特別なトナカイを借りたんだ」



 銀の笛を私の手の届かない高い位置に上げて得意げに話す。
 特別って絵本とかに出てくるあのトナカイだろうか? それなら尚更に呼んでみたい。



「赤い鼻のトナカイ?」


「違うよ! あんな若いトナカイじゃなくて、もっとすごい奴だよ」



 そう言うと私が吹きたかった銀の笛を夜空に向かって吹き鳴らした。


 がっくりと肩を落として夜空を眺めていると、星の間を稲妻が走る。


 稲妻が段々と近づいてきて、私は怖くなって彼の背に隠れてその様子を見ていた。