「ノルディン・フィンが欲しいなんて……俺の姿が見えなくなっていたら、意味ないだろう?! 目の前で泣いて名前を呼ばれても、何も届けられないなんて……怖くて」
フィンは俯いて両手の拳を震わせていた。私だけが怖かったんじゃないんだ。存在を認識してもらえなくなる方だって寂しいし、怖いことなんだ。
なんだか同じことで怖がってたのが可笑しくて笑うと、フィンは顔を上げて怪訝な表情を見せる。
「私は、もうフィンのこと見えなくならないと思う。だから怖くないよ」
「なんでそんなこと……」
「フィンのこと不思議に思ってたことは、すごく単純なことで不思議じゃなくなったの。目を開いて動いて確かめればよかったの。もし、フィンのことで不安になったら私はまたソリに飛び乗って見つけにくるから!」
小さなころは疑問なんて抱かなかった。けれど成長して疑問を抱いたら、考え動き確かめることが出来る。
目を瞑って見ないふりなんて大切な物を見逃しちゃう。
「ハッハッ! 本当に……さっきじいさんに言われたばっかりなのに、まだ目が開いてなかったみたいだ。俺も成長しないと見つけてもらえなくなっちゃうな」
私とフィンは顔を見合わせて笑った。フィンは私を抱き寄せると耳元で囁く。