銀の笛を握る手も段々と感覚が無くなり、吐く息も温度を失っていく。
――クリスマスが終わってしまう
何度も時計を見て空を確認するが、空飛ぶソリは見つからない。
「13星45番ってどれよ! 私のプレゼントはいつ届くのよ!」
夜空に叫んでも声は闇に消えていくだけで、フィンは現れない。ただ、来ないだけじゃない不安が頭をよぎる。
――見えていないだけではないのか
本当はずっと隣にいて私の頭を悲しそうに撫でているのかもしれない。
「ねえ、いるの? どっちよ……」
今年は泣いてもフィンが涙を拭ってくれることも、慰めてもくれない。
私は銀の笛を首から外すと両手で包み夜空に祈る。
「サンタさん、クリスマスに奇跡をください!」
いくら吹いても鳴らなかった銀の笛を口に咥えて思いっきり息を吹き込んだ。