「えっと。ちょっと待ってね」


ポケットをゴソゴソと漁り、紙きれを取り出した男子生徒はそれを私に差し出した。


「……何ですか、これ?」


「フルネーム、漢字で書いて」


「えっ?」


怪しい。とてつもなく怪しい。

ハーフの様な顔立ちをした彼は、少し首を傾げながらニッコリと笑って、私が名前を書くのを待っている。


「一応フリガナも付けといてね」


「は、はい」


勢いに負けた私は渡された紙に視線を落とした。A4ほどの紙の下の方に、四角で囲ったスペースがある。

……ここに書けっていう事?