「何ですかそれ。とてつもなく嫌な予感しかしないんですけど」


國枝先輩は私の言葉を聞いて、革のカバーまで付けたやたらと分厚い手帳を、私に見せつけてくる。


「失礼だな乃季! この國枝ノートは俺の全てなんだぞー。
これを見ればこの学校の内情や、生徒の事まで何でもわかるんだからな」


「生徒の事まで!? そんなの國枝先輩の頭の中だけにして、書き残さないで下さいよ!」


「それで、紀香の事何か知ってんのか?」


ソファーに寝転ぶ蘭先輩が、雑誌を読みながら口を開く。

この暑いのに変わらず長袖のカッターシャツを着ている蘭先輩。

オシャレへのこだわりに心底尊敬する。


「そうそう! 紀香ね、恋してるみたい」


國枝先輩は手帳をペラペラと捲りながら、人の個人情報をいとも簡単に暴露した。