そんな満たされた日々に暗雲が立ち込めたのは、ある日の放課後のこと。

「ねぇ静谷、今日の放課後、空いてる?」

「うん、空いてるよ?
どうしたの?」

ピンクのマフラーをカバンがから取り出して首に巻きながら、彼女は、俺を自分の席についたまま見上げた。

付き合い始めの頃に作りかけだったマフラーはあれから数日後、完成していた。
ポンポンかふさふさか、って悩んでいたようだけど、ポンポンにしたらしい。
ピンクの両端に、小さな白いポンポンがいくつもついている。

器用だなぁ、とつくづく思う。
今は、俺のマフラーを作ってくれているんだとか。