病室の前には人だかり。




とにかく、大丈夫だよね。




自分のこの目で見て、確かめたかった。




人混みをかきわけてベッドに近づく。




蒼のお母さんが泣いていた。




「にこちゃん!」




蒼のお母さんが顔を上げる。




「えっ、蒼は…?」




「蒼くんは、もう…」




川崎先生だった。




嘘でしょ??




蒼、昨日あんなに元気だったじゃん。




死ぬわけ、ないよね…?




蒼の手を握る。





「うそ…」




氷のように冷たかった。




病室の周りには人がいなくなっていた。




お母さんが来た。




「由紀ちゃん!」




蒼を見て、絶句した。




蒼のお母さんたちと病室を出る。




膝から力が抜けて、カクンとその場に座り込んだ。




「おばちゃん、おじちゃん!




蒼と、話したい…」




「にこっ!




やめなさい!!」




お母さんが怒鳴る。




「いや、そうして…?




蒼も、そうしてほしいと思うから…」




力を入れて、立ち上がる。




ゆっくり蒼の病室に入った。