みんなで電車に乗る。



「にこちゃん、緊張するよー!」



「そうだね!」



緊張で、胃がきりきりする。



会場で楽器の準備とか。



「ねぇ、にこちゃん。



あれ、蒼くんじゃない?」



蒼と佑樹くんらしき人影。



ないない。



来るわけないもん。



クラリネットだから、フルートの次。



最初の方だ。



1組前が終わった。



ついに次だ。



幕から出た瞬間、ドキドキがワクワクに変わった。



観客席を見回すと、自分の目を疑った。



蒼と佑樹くんがいたから。



点滴とかも全部外されてて、普通の服着てて。



こうして見ると、病気が治ったんじゃないかと思うぐらい元気だった。



みんなで目くばせして、始まった。



頭の中に浮かぶのは、今までのこと。



蒼とキスした文化祭。



練習も中盤のころに蒼が倒れて、余命宣告されて。



手術のときは、人生1緊張したな。



くまちゃんもあげて。



あのとき転んだ傷は、まだ残っていた。



パチパチパチパチ



拍手で我に返る。



終わったんだ。



ステージからおりると、安堵感からか、蒼が来てくれたからか、涙が出てきた。



「にこちゃん、泣かないで…??」



みんなが励ましてくれる。



美結ちゃんも、もらい泣き。



お昼を食べて、他校の発表を聞く。



サックスとかもみんな上手で、終わったはずなのに、まだドキドキする。