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「紫雨ー。カラオケいこー」
帰りのHRも終わり、ぞろぞろと人が帰って行く時だった。
私に腕を絡ませながら親友である咲奈が誘う。
くるんと巻いた髪の毛、
ちゃっかりしている萌え袖、
しっかりと自然に上を向いている長いまつ毛。
典型的な女子の咲奈から
ふわりと女の子らしいいい香りが漂った。
「ごめんね。今日は用事があるの」
高杉さんに会いに行く(正式に言えば落し物を届けに行く)なんてことは言わない。
咲奈に言ったら、きっと一人で盛り上がってあーだこーだうるさいような気がしたから。
「用事ってなによー。最近紫雨あたしと全然遊んでくれないよねー」
つまんない。と、咲奈はほっぺたをぷくっと膨らます。
「ごめんね、また今度遊ぼ?」
顔の前で両手を重ね、精一杯謝ると、
しょーがないなと咲奈は笑った。
ごめんね咲奈。
いつかちゃんと、話すから。
そして私は時間に余裕があるのにも関わらず、全速力で駅へ駅へと向かった。


