あの日、雨と傘と君と


『どうしたの?なんかあった?』


彼の声は優しくて、なにか心配してくれてるみたいで、

変に緊張してしまう。


早くなる鼓動を抑えながら


「あ、さっきー…」


高杉さんがハンカチを落としたこと。


それを私が拾った。


ということを本人に説明した。


「だから届けに行きますよ。」



『いや、悪いからいいよ。俺が取りに行く。落としたの俺だし』


あ、でも紫雨ちゃんの家知らない。と、


高杉さんはしばらく考え込んだ。


『ー…ほんと悪いんだけど、届けてもらってもいい?』


「もちろんです!」


自然と紫雨の顔には笑顔がこぼれた。


なんか私、今すごくドキドキしてる。


「明日、高杉さんが平気なら届けに行きますよ。」


『え、ほんと?俺明日6時以降なら大丈夫だよ』



「じゃあ6時半にいきますね。待ち合わせは…」


待ち合わせ…


それは昨日今日と出会った


「夢見が丘駅の下で。」


『了解!じゃあ、おやすみ』


ピッという音と共に高杉さんの声は消えた。


案外さっぱりしてる人なんだな。


さすが大人。


早く明日にならないかな。


早く授業終わったりしないかな。


赤く染まる頬を冷え性特有の冷たい両手で冷やしながら


ベッドで寝てしまった。



ー早く明日が来ないかな