あの日、雨と傘と君と


「あーもーどうしよう!」


バンっと効果音を立て

椅子から立ち上がった瞬間、


プルルルル…と、音が聞こえた。


…まさか?と思い


恐る恐る画面を見ると、


なんと、発信中になっていたのだ。


ばんっと椅子から立ちあがった反動で


間違えて発信ボタンをおしてしまったのだ。


ーやばい。やらかした。


と思った時にはもう遅かった。


「もしもし?」


通話状態になっているではないか。


「あ、あの。もしもし…。七瀬です。」



『あ、紫雨ちゃん?』


''紫雨ちゃん''。


下の名前で呼ばれたことに、不覚にもドキッとしてしまう。


いや、でも。大人にとってそれは普通なんだ。


紫雨は赤くなる頬に手を当てて、ばれないように必死に深呼吸をした。