「あーもーどうしよう!」
バンっと効果音を立て
椅子から立ち上がった瞬間、
プルルルル…と、音が聞こえた。
…まさか?と思い
恐る恐る画面を見ると、
なんと、発信中になっていたのだ。
ばんっと椅子から立ちあがった反動で
間違えて発信ボタンをおしてしまったのだ。
ーやばい。やらかした。
と思った時にはもう遅かった。
「もしもし?」
通話状態になっているではないか。
「あ、あの。もしもし…。七瀬です。」
『あ、紫雨ちゃん?』
''紫雨ちゃん''。
下の名前で呼ばれたことに、不覚にもドキッとしてしまう。
いや、でも。大人にとってそれは普通なんだ。
紫雨は赤くなる頬に手を当てて、ばれないように必死に深呼吸をした。


