「おはよ」


私が挨拶をすれば、彼は笑顔で挨拶を返してくれた。


「飯、用意してあるから」


そう言われてテーブルに向けると用意されてあったのは、フレンチトーストとサラダ。ご丁寧にオレンジジュースまである。


この男どこまで完璧なんだ。


椅子に座り、「いただきます」と言ってフレンチトーストに口をつける。それは私好みの味でとても美味しかった。


ちらり、颯真を見れば彼はソファーに座りコーヒーを飲みながら新聞を読んでいた。


………不思議な人。


颯真は、スーツが似合うような人間じゃない。切れ長の目に黒色の短髪、がっしりと鍛えられた体形をしていて不良っぽいというか妖しい雰囲気というか"夜"が似合うような男だ。


最初はホストでもしているのかと思ったけど、それは違うみたいで。彼はどこかの整備工場に勤めているらしい。ベランダに干された洗濯物に作業着があるのを見て知った。


きちんと定職に就き、朝はしっかりと起きて規則正しい生活を送り私のためにフレンチトーストやらパンケーキやら似合わないものを作ってくれて、一人暮らしのくせに新聞まで取って読んでいる。


それなのに私みたいなよく分からない女に構うなんて。


真面目なのか不真面目なのか。