高2の春。







私と麗奈は、去年と同じく
「私立紅蘭高等学校」に通っていた。


地元でもフツーな私立高校だから、
いろんな人たちがいっぱい集まる高校で
人気なんだ。





…後々、その考えは崩れ去るけどね。






「あ、麗奈。おはよう」

「明日香っ、おはよ」



待ち合わせ時刻に、ピッタリ到着した
この子は、私の親友の 坂本麗奈。






ロシア人と日本人のクォーターなんだ。


お母さんがロシア人と日本人のハーフで、
すっごく綺麗な人。



麗奈は、顔の創りとかはどちらかといえば 日本人に近いかな。





でも、

生まれつきの明るい茶色の髪で、
日本では珍しい、銀色の瞳をしている。
それに、肌は 透き通るように白い。






…本人曰く、

「少し日に当たるだけで すぐに赤くなって ヒリヒリするから、こんな肌は嫌」なんだって。






私たちはいつも、近所の公園前で
待ち合わせをしてから学校に行く。



「あれ、麗奈。今日は寝不足?」

麗奈の目の下にクマがあったのを、私の目は見逃さなかった。



「あ、うん。ちょっとね。
昨日は夜中まで見回りしてたから」

「そっか、お疲れ様。」



麗奈の言う【見回り】っていうのは
その名の通り、この地域を見回ること。

麗奈はこの街じゃ有名人だし、怖いものなしだからね。





弱い不良やチンピラなんかは、麗奈を見ただけで しっぽ巻いて逃げちゃうくらい。



「で、昨日は事件あった?」


これは、私の決まり文句。
毎朝麗奈に、昨日のことをなるべく話してもらうんだ。

そうじゃなきゃ 話してくれないんだもん。






「えっとねー…。あ、暴走族にあった。」

「暴走族?へぇ…この街にもいたんだ。」


この辺に暴走族なんて 初耳だ。

強いのかな?




「なんて言う名前の族なの?」

「たしか⋯【紅蘭】だったかな。」




紅蘭…?そういえば。


この街にいる 暴走族の名は、【紅蘭】で。

私たちの通ってる高校も 私立【紅蘭】高校。





…偶然、なのかな。







うーん、と頭を捻りながら先へと進む私とは対象的に、麗奈は立ち止まって私の背中を眺めていたらしい。





「…偶然じゃないよ、明日香」


麗奈の声は、桜色の空気に混ざってしまって、私の耳には届かなかった。