ろっくおん!

『奏乃ちゃん、着いたよ?』






『あ、うん。』






バスから降りてカフェに向かうと、
窓側のテラス席で桜月くんと由宇ちゃんが話してた。


『おーい、和泉ー。』




『あ、智也。奏乃ちゃんも昨日ぶりだね。』




『うん。』




私はなんとなく由宇ちゃんと気まずくて、目を合わせずに下を向いた。




『奏乃…』




『さ、奏乃ちゃん。由宇と話そうか?』




桜月くんまで、由宇ちゃんのことは由宇って呼ぶのに。
私は奏乃って呼んでくれないのか。




『…私、話すことないよ。』




わざと突き放した言い方をしてしまう。
こんなこと言いたいんじゃないのに。



『奏乃ちゃん。とにかく俺らはあっちの席いるからさ、話してみ?』



そう優しく智也くんは言って、私の肩を叩いた。




『…。』




私はとりあえず由宇ちゃんの前の席に座って、ミルクティーを注文した。




『じゃ、また後でね?』




2人は行ってしまった。



『…奏乃、私なにかしたかな。』



『…何もしてないよ。』




『でも、』





『由宇ちゃんは、何も悪くないよ。』





私は下を向いて答えた。
今前を向けば、涙が出そうだった。


どうして自分でもこんな感情になっているのか、わからなかった。