車道がある大きな通りまでは数十メートルほどのなだらかな坂道を下っていく。


いつもは自転車でサーっと通り過ぎるだけの道。


しかし、大和さんとのデートの時はきまって歩いていく。


紳士な彼は必ずアパートまで送り届けてくれるから。


ご近所さんの庭に季節の花が咲いていたり、空き部屋があった別のアパートに新しく住人が入居していたり……普段なら気付かないような変化を楽しみながら歩く。


その時、バッグの中でスマホがブーっと震えた。


『アパートの坂の下にある駐車場にいます』


大和さんからのメールが届く。


もうすぐその駐車場のそばを通るところだった。


時間を見計らったかのようなタイミング。