「なによ……」


「別に。さっきの愚痴はただの惚気(のろけ)だったのかなぁって」


「これでもけっこう切実なんだよ、色々と」


「でも、デートできるんだ?」


「うん……」


樹の頬はポッと熱を帯びた。


今ならどんなに照れてもお酒の所為にできる。


「良かったね。ハイ、乾杯」


満はまるで自分の事のように嬉しそうに酎ハイの缶を軽く掲げた。


この子はそういう女性。


「ありがとう」


そう言って、自分が持つビール缶とカツンと合わせる。


「頑張れ、樹」


親友の声援で気持ちが少し浮上する。


その笑顔がいつも樹を前向きにさせた。