『今からお祝いする?樹の好きなごはん作って待ってるよ?』


満は自分のことみたいに嬉しそうにしてくれた。


こんな素敵な親友は世界中どこを探したっていないから、本当ならすぐにでも会いにいきたい。


「……ごめん。これから大和さんのマンションにお邪魔して髪をカットしてあげることになってるの」


樹は申し訳なさそうに事情を説明する。


『そっか。じゃあ、お祝いはまた今度……』


樹の申し訳なさとは裏腹に、彼女はとても明るくあっさりしていた。


『高津さん、また一段とカッコ良くなるね』


満の一言に樹は「どうして?」と疑問を投げかけた。


『だって、樹がカットするんだもん』


「でも、アタシなんかまだ……」


謙遜でもなんでもなかった。


これが紛れもない実力。


『自信持ちなよ。高津さんの事、一番よく分かってるのは樹なんだから。きっと大丈夫!』


「そうかなぁ……?」


『そうだよ。じゃあ、健闘を祈る!』


まるで、出陣式みたいな物言い。


樹はプッと吹き出して「ありがとう」と伝える。


そして、二人の通話は自然と終了されたのだった。