僕はしばらく、南の後ろ姿を眺めていた。
だんだん、南の姿が小さくなっていく。
でも、南と話したい、笑顔が見たい、そんな思いは強くなる一方だ。
これが、好きっていう気持ちなのかな。ちょっと分かった気がする。
南が熱を出して休んでいた間、何だかつまらなかった。南がいたから楽しいんだ、そう感じた。
ん? まてよ? 僕はノートを開いた。いつだったか、恋という言葉を辞書で引いてメモしたことがあった。
“人を好きになって、会いたい、いつまでもそばにいたいと思う、満たされない気持ち”
ノートにはそう書いてあった。これだ。まさにこれだった。
僕は、南に恋をしていたんだ。南のこと、好きなんだ。
ようやく、心のもやもやしたものが取り除かれたかのような、そんな気分だった。

