私は彼に引かれるまま、まるで連行されるように夜の街をドナドナされていく。
神様、意味が解りません!
彼が怒っている理由も、引っ張られている理由も。
人混みの雑踏を抜け、何本か通りを外れて、静かな道に出る。
司さんが立ち止まったのは、一本の街灯の下だった。
彼の速い歩調に合わせて半分走っていた私は、軽く息を弾ませている。
ようやく腕を放してもらえて、私は呼吸を整えるよう、胸に手を当てた。
くるりとこちらに振り向いた司さんは、そんな私をじっと見下ろして。
「あのさ、まだ解ってないよね?」
「は、はい、?」
「俺は誰でしょう」
「司さん」
「そうだけど違う」
「王子?」
「ハズレ」
「誘拐犯?」
「喧嘩売ってる?」
いや、大真面目ですって!

